2026年9月5日(土) 公開 3 訂正 0 RSS
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USB-Cハブの「4K60Hz」と「10Gbps」は、4本のレーンを分け合う

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USB-Cハブの商品ページには、たいてい大きな数字が2つ並んでいる。映像側の「最大4K60Hz」と、データ側の「最大10Gbps」。

4K60Hz は、3840×2160の画面を毎秒60コマ書き換えられること。10Gbps は、外付けストレージなどとのデータ転送が毎秒10ギガビットまで出ること。ノートPCに外部モニターと外付けSSDをまとめてつなぐ人が、それぞれ気にする値だ。どちらもそのハブが出せる値ではあるのだが、両方を同時に出せるとは書かれていない。

この2つを並べて見るのは、片方を上げるともう片方が下がる関係にあるからだ。鍵はレーンの本数にある。レーンとは、USB Type-C のコネクタの中で高速な信号を運ぶ線の組のことで、映像に使えるのは4本しかない。映像へ多く割くほど、USBのデータ側に残る本数が減る。並んでいる最大値は、それぞれ単独での上限であって、同時に成立する組み合わせではない。

レーンの配分

DisplayPort Alt Mode を策定したのは VESA で、USB Type-C コネクタの Alternate Mode という機能拡張の上に載せている(VESA, 2014-09-22)。同じ発表に、配分の説明がそのまま書いてある。

By leveraging USB Type-C’s flexibility, the DisplayPort Alt Mode can choose to transmit on just one or two of the four available lanes, so that the other two lanes can be used for SuperSpeed USB data at the same time.

映像に使うのは4本のうち1本でも2本でもよく、余った分を SuperSpeed USB に回せる、という設計だ。裏を返すと、映像を上に伸ばすほどUSB側が削られる。VESA が挙げている構成を整理すると次のようになる。

配分ごとに、映像側で何が出せて、データ側に何が残るのかを並べる。

映像に使うレーン映像側で挙げられている解像度USBデータ側に残るもの
2本 (1本あたり8.1Gbps)4K UHD (3840x2160)SuperSpeed USB 各方向最大10Gbps
4本最大5K (5120x2880)専用ピンを使う USB 2.0 のみ

4レーン構成については、VESA は “USB 2.0 data can still be carried across the USB Type-C connection using separate pins dedicated for that function.” と書いている。still can be carried という言い方で拾えるのは USB 2.0 までで、SuperSpeed は残らない。5Kまで出せる構成は、USB側の速度と引き換えに成り立っている。

自分が買うなら、ここで5Kは捨てる。外付けSSDが USB 2.0 の速度に落ちる状態は、モニターの画素数が増えたことでは埋め合わない。2レーン構成の4K UHDと10Gbpsが同時に動く側を取る。

見覚えのある数字の並び

上の表の1行目を読んでいて手が止まった。4K UHD と 10Gbps という組み合わせは、商品ページで見慣れた並びとまったく同じだ。

たとえば Anker PowerExpand 8-in-1 USB-C PD 10Gbps データ ハブ (A8383NA1、税込6,990円、価格確認日 2026-09-05) は、製品名に10Gbpsを入れ、仕様欄に「最大4K (60Hz) 対応HDMI」を置いている(アンカー・ジャパン)。VESA が2レーン構成の例として挙げた数字と、並びだけ見れば一致する。

とはいえ一致は根拠にならない。同じ数字は、4レーンで映像を出したうえでデータ側の最大値を別に書いた製品でも並べられる。配分そのものを明記した製品ページは、今回探した範囲では見つからなかった。

ハブのHDMI端子

USB-CハブについているHDMI端子は、DisplayPortの信号をそのまま出しているのではないらしい。VESA は “The dock can also be configured with DisplayPort protocol converters to support HDMI, VGA and/or DVI monitors.” と書いており、変換チップを挟む構成として説明している。

つまりHDMI側の上限は、レーン配分で決まる帯域と、変換チップが対応する範囲の両方で決まる。ハブにHDMIが付いていることは、PC側の映像対応の代わりにはならない。A8383NA1 の商品ページも、4K60Hzでの出力にはPC側がDisplayPort 1.4に対応している必要があると注記している。条件はきちんと書かれているが、置き場所が製品名から遠い。

なお、DisplayPort Alt Mode の認証は取らないという選択もできる。VESA が認証プログラムを出したときの発表では、会員は Authorized Test Centers での試験か self-testing のどちらかを選べるとしたうえで、“Lack of certification can create risks with respect to product functionality, as well as safety.” と書いている(VESA, 2016-12-13)。認証の有無は商品ページに書かれないことが多い。

PD欄の食い違い

給電の側では、規格の読み違いより先に別のところで引っかかった。A8383NA1 の公式ページは、製品仕様欄で最大出力85W、ハブ自体の消費15Wと書いているのに、よくある質問欄には Max 48W と書いてある。同じページの中で数値が割れている。

どちらが現行個体の値なのかは、公開情報からは決められなかった。85Wか48Wかを当てたいわけではない。規格の定義を調べにいく前に、同じページの別の欄を読んだほうが早い場合がある、という話だ。

PD欄を読むときは、入力と出力を分けて見る。A8383NA1 の場合は最大入力100W、最大出力85W (仕様欄) で、この差がハブ自体の消費にあたる。手元のノートPCが必要とする入力W数と比べるのは、入力100Wではなく出力側の数値のほうだ。

買う前に見る場所

商品ページの最大値を、自分の接続構成に置き換える順番を書いておく。

  1. PCの仕様表で、USB-Cポートの説明に「DisplayPort Alt Mode」または「映像出力対応」の記載があるかを探す。「USB 3.2 Gen2」など速度の表記しかないポートは、映像が出るとは書かれていない
  2. ハブ側の注記で、4K60Hzの成立条件を読む。A8383NA1 のように「PC側がDisplayPort 1.4対応であること」と書かれていれば、条件はPC側にある
  3. ハブ側に「4K60Hz出力時のデータ転送速度」の記載があるかを探す。記載がなければ、映像とデータの最大値が同時に出るかは未確認として扱う

3が書いてある製品は、探した範囲ではほとんどなかった。見つからなければ、映像を出しながらの転送速度は買ってから確かめることになる。それが嫌なら、映像とストレージのどちらを優先するかを先に決めて、優先しない側の最大値はあてにしない。あまり格好のいい結論ではないが、公開情報でたどれるのはここまでだった。

確認できなかったこと

  • A8383NA1 が4K60Hz出力時に映像へ何レーン割り当てるか。公式ページに記載を見つけられなかった
  • そのときデータ側に残る実効速度。同上
  • PD最大出力が85Wと48Wのどちらか。公式ページ内で食い違っており、公開情報では決められない
  • 全ポート同時利用時の発熱と、個別のPCとの相性。実機がないため書かない
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