USB-Cケーブルを買おうとすると、商品名に「100W対応」と書いてある。ところがパッケージの認証マークを探しても、100Wという表示は見つからない。
USB-IFの認証で電力を表すマークは、60Wと240Wの2種類だけだ。 商品名のワット数と、認証マークの語彙は別の体系にある。しかも電力の表示は、データ転送の速さを何も保証しない。USB-IFの文書と実際の製品表記を並べて、パッケージのどこを見ればよいのかを整理する。
商品名の「100W対応」は、認証マークの言葉ではない
まず、実際の製品の書き方を見ておく。エレコムのMPA-CC5PS20BKは、製品名が「USB2.0ケーブル(USB Type-C - USB Type-C/100W対応/高耐久)」だ。本文には「USB Power Deliveryに対応しており、最大100W(20V/5A)で接続機器への給電が可能です」とあり、続けて「最大480Mbpsの高速データ転送が可能です」と書かれている。エレコムの製品ページ
USB Power Delivery(USB PD)は、つないだ機器どうしで電圧と電流を決めて給電する仕組みのことだ。100W(20V/5A)は、20ボルトで5アンペアを流したときの電力にあたる。480Mbpsは1秒あたりに送れるデータ量で、USB 2.0の速度になる。
この1本は、電力では100Wに対応し、データでは480Mbpsになる。電力が大きいほどデータも速い、という関係にはなっていない。商品名で一番よく見る数字が100Wなので、対応する認証マークがあるだろうと思って調べ始めたのだが、USB-IFの一覧にその表記はなかった。
なお同じページには「接続する機器がUSB Power Delivery対応である必要があります」という注記もある。ケーブル側の数字は、それ単体で実現する値ではない。
認証マークが表す電力は60Wか240Wのどちらか
USB-IFは、コンプライアンスプログラムを通すための条件をこう書いている。すべてのUSB-C to USB-Cケーブルは、60Wまたは240Wの電力表示を、対応するアイコンかロゴで付けている必要がある。しかもマークはテストの前に付けることが求められ、テストの中で表示が意図どおりかを確認する、という順番になっている。USB-IFのケーブルとコネクタのページ
2026年1月に更新された認証マークの要件を見ると、ケーブル用の電力マークは「Cable 60W/240W Logos」という1つの項目にまとまっている。60Wの表示はUSB Power Delivery 3.2のStandard Power Range向け、240WはExtended Power Range向けのテスト手順に対応し、「Rated for the number of watts as indicated in the designation」、つまり表示されたワット数で定格される、と書かれている。USB-IFの認証マーク要件
Standard Power Range(SPR)とExtended Power Range(EPR)は、USB PDが扱う電力の範囲の呼び分けだ。USB-IFは、PD Revision 3.1の更新前は20VとUSB Type-Cケーブルの5A定格による解決策で100Wが上限だったと説明している。3.1では28V・36V・48Vの固定電圧が加わり、それぞれ最大140W・180W・240Wになる。USB-IFのUSB PD解説
ここで100Wという数字の位置が分かる。100Wは、電圧を上げる前の時代の上限、つまり20V×5Aを指している。認証マークの側は、その旧上限に合わせた区分を持たず、SPRとEPRの2つで分けている。
一つ、今回の資料では決められなかったことがある。20V・5Aで100Wに対応するSPRのケーブルが、60Wと240Wのどちらの表示になるのかは特定できなかった。表示されたワット数で定格されるという記述と、SPRが60Wの表示に対応するという記述が、100Wのケーブルについてどう組み合わさるのかまでは書かれていない。ここは未確認として残す。
電力の表示は、データ速度を保証しない
電力とは別に、データ速度の表示も決められている。USB-IFは、High-Speed USB(USB 2.0)のUSB-C to USB-Cケーブルを除くすべてのケーブルに、対応するデータ速度の表示を求めている。USB 2.0のケーブルは電力アイコンが必要な一方、USB 2.0のトライデントや対応するHigh-Speedロゴを足すのは任意とされる。USB-IFのケーブル用ロゴ要件
1本のケーブルに、別々の条件で決まる2つの表示が付く。図はUSB-IFのロゴ要件の記述をもとにした説明用の図で、マークの実物の形を再現したものではない。
2つが1つのロゴにまとまる場合もある。USB-IFは例として、20Vで3Aに対応するUSB 20GbpsのUSB-C – USB-Cケーブルは「Combined Performance and Power 20Gbps/60W」のロゴを付ける必要がある、と書いている。スラッシュの左が速度、右が電力だ。この形なら、1つの表示で両方を読める。
先ほどのエレコムの製品に当てはめると、USB 2.0のケーブルなので、速度の表示は任意になる。商品名の「100W対応」は電力の側の説明で、データの側は本文の「最大480Mbps」を読む必要がある。自分が確認するのは、電力の表示と速度の表示の2つだ、と決めておくと迷いにくい。
パッケージで確認する順番
USB-IFは、認証済みケーブルについて先に釘を刺している。認証済みのケーブルを使うことは、USB製品側の認証を不要にするものではなく、製品の能力を増やすものでもない、という文だ。USB-IFのケーブル認証プログラムの説明
つまり、ケーブルを買い替えても、機器の側が対応していない電力や速度には届かない。確認は次の順になる。
- 使う機器の仕様で、対応する電力と、対応するデータ速度を確認する。ここが上限になる。
- ケーブルのパッケージで、電力の表示が60Wか240Wかを見る。必要な電力が60Wを超えるなら240Wの表示を探す。
- データ転送に使うなら、速度の表示を見る。「20Gbps/60W」のような複合表示なら、スラッシュの左が速度にあたる。
- 商品名や説明文のワット数は、認証マークとは別の記述として読む。両方が同じことを言っているとは限らない。
ケーブル内のチップについても触れておく。エレコムは先ほどの製品に「eMarker搭載のため、USB Power Delivery対応時の接続機器の適正電圧を自動調整」と書いている。これはメーカーによる説明で、USB-IF側の記述としては、E-markerを実装したケーブルのテストはUSB Power Delivery Compliance Planを参照する、とされている。eMarkerがあること自体は、特定のワット数や速度を示す表示ではない。
確認できなかったことを残しておく。100W対応をうたうSPRケーブルがどちらの表示になるかは前述のとおり未確認だ。今回、個々の製品がUSB-IFの認証を取得しているかどうかも照合していない。実測も行っておらず、実際に流れる電力や転送速度は確認していない。
まとめ
- USB-IFの認証で電力を表すケーブル用マークは60Wと240Wの2種類で、60WはSPR、240WはEPRのテスト手順に対応する。100Wという表示はマークの語彙にない。
- データ速度は電力とは別の表示で、USB 2.0のケーブルを除いて表示が必要になる。「20Gbps/60W」のように1つのロゴへまとまる場合もある。
- 認証済みのケーブルでも、つなぐ機器の能力は増えない。電力も速度も、先に機器側の対応を確認する。
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